探す時間はバカに出来ない。
ものづくりの世界では、生産の効率、つまり実際にモノを加工している時間が価格に反映されます。材料費などは実際にかかった金額ですので分かりやすいのですが、加工費という項目は実は曖昧です。時給〇〇円でいくつ加工できるか?を元に算出します。材料費や加工費以外、検査費用、梱包・出荷費用など、細分化すれば色々な項目が出てきます。
今回のブログで強調したいことは、実際の加工や検査以外の間接的な費用です。ズバリ、何かを探す時間です。どうしても実際の加工時間ばかり注目されますが、直接的な作業者でも、実は実際の加工時間以外に多くの時間を割いているのです。
当社でいう具体的な探す時間は、版を探す時間、データを探す時間、型を探す時間、注文を探す時間、納期を調べる時間、仕様を確認する時間、などなど、勤務時間中、探す時間はとても大きいのです。実際の加工に入るまでの段取りの時間の一部と言って良いと思います。
IT技術の発達で、パソコン上で管理出来る事は日々多くなっています。社内のデータベースやサーバーで、注文の検索やデータの格納は簡単にできるようになりました。ただし、簡単と言ってもシステムを作って社員全員で運用するのは大変ですけどね。「データ」で何とかなるものはまだ良いのです。
問題なのは、実物、実際のものです。版や型、在庫などがそれにあたります。これは実際の加工者が必要とする情報で、いちいちパソコンを立ち上げてみる時間が無いケースがほとんどです。なので、当社の場合は、常に決まった台帳にメモをする。これだけです。まずは台帳を必ず作ることから始めますが、初回の納品の際の必ず台帳を作る、そして、この台帳にメモを必ず書く、そのようなルールで運用しています。実に単純ですが、時間が無い場合は、その作業さえ面倒になる場合もあります。でも、その1分が、将来の探す時間(例.30分)を削減できるのです。この探す時間は本当にバカに出来ません。例えば製品の加工時間を工夫して30%削減しても、探す時間がある場合、そのコストダウン分が無駄になってしまうのです。
私の場合、加工に直接かかわる部分と間接的な部分を一緒に考えています。理由は、うちの会社は小規模だからです。受注から出荷までを一つの線として考えていると、ここは製造費、ここは販売管理費など、分けて考える必要は無いと思っています。
何かをメモする習慣も大切ですけど、その情報の場所を決めておくこともとても大切です。当社の場合、製品台帳があるので必要なものは台帳に必ず記載します。記載できる情報はそれでOKなのですが、それ以外の、もしかしたら今後使わないかも、っていう情報の場所も決めておかなくてはならない。実はこの曖昧な情報を探す時間がとてもかかってしまう。
よくある例は、お客さんからの見本。実際に注文になったものは台帳に添付しておきますが、見積もりから大分時間がかかったものなど、「あれ!サンプルどこだっけ?」ってことがよくあります。また、特急で作成した単発品で台帳を作成していないものの特色サンプルなど。結構、困るんですよね、、こういうケース。大体私のせいで見本を探すのですが(笑)過去の教訓から、お客さんのサンプルはこの箱に入れて絶対に捨てない!というルールを作成して、とにかく箱に入れておくようにしています。色見本も同様。いろいろな情報を書き込んで保管するのではなく、時間が無い場合は、とにかくこの箱にしまっておく!というルールを作っています。実物を見れば大体記憶がよみがえってくる。
もちろんデジタルで出来ることはしています。見積資料を写真とってEVERNOTEに入れとくとか、Gmailで自分宛にメールしておくとか、クラウドや社内のサーバーで管理できるものはします。でも、デジタル化も結構時間かかって面倒になることが多いので、時間が無い場合は、場所を決めてとにかく保管する。それだけで良いケースも結構あります。
ルール作りも大切ですけど、最低限、情報を保管する場所を決めておくこと。このルールだけで探す時間を短縮できる。実に単純ですが、やっておくと将来絶対に役立ちます。あとは、いつその情報を整理(廃棄)するかです。これが難しいです。なので、今のところは何でも取っておくようにしています。で、ある程度のところで断捨離です。捨てる時は躊躇なく捨てます。
このような情報の整理を日々進めてはいるのですが、情報を探す時間の削減って、実は残業時間の低減につながっていると思うんですよ。作業者の隣に座って実際に何をやってるか?ストップウォッチで測るわけにいかないので具体的な割合は分かりませんが、情報の整理とコミュニケーションの円滑化に力を入れてから、みんなの残業時間が減った気がします。何かを探して加工待ちになる時間を極力抑える。つまり、仕事の流れが1本でつながる、これこそが効率化だと思うんですよね。