0.05mmの世界
人の目ってすごいんです。今はやってはいませんが、以前は看板の取り付けとか、カッティングシート貼りとかやってました。壁などの貼り付ける際、1mmとかズレていても、あ、平行じゃないって分かるんです。
銘板の文字も一緒で、ほんの少し、例えば0.1mmでも太かったり細かったりすると見え方が違います。アルマイト印刷なんかは、結構再現性ありますが、エッチングやシルク印刷などは、刷る力や彫っている時間で、文字が太かったり細かったりします。ある程度はご了承頂いております。もちろん文字がつぶれたり切れたりした場合は不良としてはじきますが。
私は自分で原稿データを作ることが出来ます。イラストレーターが使えます。校正確認を取って版を作成する際、デザインによって微妙に太さを変えるんです。特にエッチング、彫り込む場合、彫り込んだ部分が太ります。厳密に言うと、どうやってマスキングするかにもよるのですが、詳しいことはここでは省きます。でも、その微調整で見え方が変わります。
エッチングでは彫った部分に塗装で色を入れる。文字を素材色(ステンレスならシルバー、真鍮ならゴールド)にする場合、文字以外を彫るんです。だから、彫る部分は通常、データより太りますので、凸文字って結構難しいんです。で、微調整する寸法って、0.01~0.1mmの間。大体0.05mmとか太らせたり細らせたり。そんな微調整をしているんです。
それは実際に彫る人のエッチング時間の長さだったり、デザイン上、文字が多いのかベタが多いのか、様々な要因が関係してくる。だから、一概にルール決めは出来ません。都度、考えます。
明朝体とゴシック体ってよく聞くと思います。ゴシック体って、文字の太さはある程度一定です。でも、明朝体って、同じ文字の中でも太い部分と細い部分があるんですよ。だから、明朝体の凸文字の時は特に気を付けます。修正しないと線切れしますから。
実は、結構、その修正作業は面倒なんです(笑)思った通りにいかないことだってよくあります。でも、、せっかくご注文頂いているんだから、やっぱり喜んでもらいたい訳です。もしかしたら、そんな差なんて気にしない、読めれば良いって方もたくさんいらっしゃいますが、それでも微調整はしたいのです。
以前はあまり気にはしていなかったかもしれませんが、昨年の後半から、「品質」について再考する機会が増えたからなのかな。それも、ここ最近での自分の変化です。取り扱う製品は古くからのものですが、長年やっていると気づくこともあり。そんなこと知ってるわ!!って先輩は言うかもしれませんが、自分には新鮮だったりします。銘板屋も奥深い仕事だと思っております。