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製造業のコスト①~目に見えないコスト~

製造業でコストの計算をする時、材料費・加工費・間接費(検査、梱包、副資材費、販売管理費)など、各項目に分けることがよくあります。これは見積もりの提示上、必要な作業です。

私がこの記事で言いたいことは、もっとリアルなコスト計算です。実際に加工が行われている時間以外の間接的な時間も考慮に入れないとダメです。大量生産時代は、材料費・加工費などの項目の積算でコスト計算が出来ましたが、多品種少量生産が主流な現在では、その項目に入らない間接的な時間の割合が非常に大きくなっています。

加工費の計算をする際、例えば1時間でシールを何枚印刷できるか、プレスで何ショット出来るか、穴を何個あけられるか、ざっくり計算してコストを算出しますが、その際、型を替えるなどの段取りの変更だったり、その仕事を製造部に伝える打ち合わせの時間だったり、ストップウォッチで測れない間接的な時間が大量に存在しています。もちろん競争が激しい業界ですからそのすべてを正直に余裕をもって算出して金額を出しても競争には勝てません。

時間内に何個加工できるか?このコストは機械設備にもよりますが、差別化することは非常に難しい。お金を出せば最新鋭の設備は導入できるわけです。だから、当社のような小規模な会社で細かい仕事をたくさんこなすには、目に見えない間接的なコストをどこまで下げられるかということです。

私が考える最も大きな間接的なコストは、コミュニケーションのコストです。少品種大量生産の会社は、一個の製品が何秒で作れるか?という昔からのコスト感覚で良いのですが、当社のように毎日ゲリラ戦の会社は、加工を始めると製品はすぐに出来上がってしまいます。なので、重要なのは、加工を始めるまでの段取りやコミュニケーションの時間なのです。多品種少量生産では、実際に加工している時間より、そのような間接的な時間の方が多いのではないでしょうか?考える時間、確認する時間で作業者の手が止まってしまうこと、実はこれが大きなコストなのです。

間接的なコストは簡単に数字では表せません。給与などの固定費は結局毎月払う金額ですので、無駄な外注費などと違い、すぐに改善しなくては!というモチベーションがなかなか生まれません。残業代が売上の伸びより増えれば気が付きますが、忙しくて頑張ったんだな~と思ってしまいます。なので、普段、何気なく行われている社内のやり取りにアンテナを張っておく必要があります。経営者で常に社内の仕事に目を光らせていれば気が付いているはず!ということが多いです。要は、気が付いたことにどこまで切り込むか。

多品種少量の仕事が多いと、不定形な仕事がたくさんあります。不定形な仕事が多いと、もろもろ確認事項があるので、社内がバタバタします。あ~忙しい!大変だ!という、忙しさで高揚感を生む感覚です。でもその忙しさは本当に利益を生んでいるのか?そんな忙しい状況だと、せっかく新しい仕事が入りそうでも断らざるを得ないケースだってある。これは機会損失です。

なので、そのような不定形な仕事がたくさん入っても、すーっと仕事が流れるような仕組みにする必要があるのです。作業者が考えずに済む仕組みです。仕事が入ったらすぐ定形の業務を始められる仕組みです。

大手の会社であれば仕組みはすでに出来上がっています。あまりに細分化されて自分の役割が分からないくらいです。小規模の工場にそれが必要か?もちろん必要です!このコミュニケーションのコストは自社の努力でどうにでもなるし、利益の源泉となります。ISOを取らなくても、高額な業務システムを導入しなくても、少しの工夫で出来るものです。

次の記事ではもう少し具体的に書こうと思います。