製造業のコスト②~どう下げるか?~
前回の記事では、間接的なコスト、コミュニケーションのコスト管理が大事と書きましたが、この記事ではもう少し詳しく説明します。
肝はやはり業務フローかと思います。見積→受注→生産指示→加工→検査→出荷。このフローをどこまで効率的に短時間で進めるか。もはや、そのコストが販売管理費なのか、製造原価に含まれるかは帳簿上の話で、全社として一つの流れとしてのコストです。実際に作業する製造部、それを検査する検査部隊、大量な注文をまとめて出荷する業務部、一人一人が他のことを考えず作業に集中するにはどうするべきか?やはり、作業の標準化が肝だと思います。
多品種少量だと標準化は難しいです。それは良く分かります。でも無理ではないのです。100%無理でも70~80%標準化できれば十分です。私はこの標準化を入社以来、いつも最重点課題として考えています。不定形な仕事でも、社員みんなが理解できる範囲で定形化していけば良いのです。この種類の注文が入れば、社内の〇〇君にまず原稿を依頼→次は〇〇さん経由で、〇〇君へ指示する。など。当社は数万件という製品の種類がありますが、業務フローの流れはざっくり3パターンくらいしかありません。なので、社員みんなの動き方が毎日同じです。
この製品はここが特殊、あ、これも任せられない、とか思わず、とにかくパターン化してしまえば良いのです。続けていると特殊なものでも、いつの間にか社員の間で定形化していきます。あ、これはこのパターンね!とか。そうすれば考える時間がどんどん減っていく。社長が一番根本の業務フローを決めますが、もっと細かい部分は社員が勝手に定形化してくれるんです。みんな定時に帰りたいですからね(笑)
帳票も大事ですね。例えば「製造指図書」。製造指図書には材料や厚み、加工の種類、外注先などの情報が書いてありますが、必ずセットで製品台帳を付けています。台帳にはシステム上書ききれない情報を作業者が手書きでメモしています。なのでリピートの際はそのメモを見ることが出来ます。この手書きメモがとっても重要です!あれどうしたっけ?と考え始めると作業者の手が止まります。これは間接的なコストとなってしまいます。作業者の手を止めずに、集中して作業してもらうこと、これが大切なんです。
外注先さんも無理には広げないし、毎日決まった時間に回るようにする。アルマイトだったらココとココ。エッチングであればココとココと決めてしまえば、外回り営業だって決まったスケジュールで動けるし、気を付けるポイントも忘れずに伝えることが出来る。もちろん人によって言い方や伝え方のポイントはあるわけで、標準化すれば毎回考えなくても良い訳です。
あとは作業の順番。これが最も重要。毎朝ミーティングを行っていますが、製品の納期から作業の順番をその30分のミーティングできっちり決める。やることはもちろん決めますが、やらないことも決める。もちろん差し込み案件もたくさんありますが、スケジュールが明確だと、差し込みあっても作業を後ろ倒しするだけで良いので大崩れしません。
また、作業が終わればバーコードをスキャンして作業した日時が記録される仕組みがあります。すごい細かいですが、シールであればプリントするとスキャン、カットするとスキャン、と1つ1つ完了フラグを付ければ、今、仕掛品はどこにあるかが明確で、お客様から前倒し依頼あっても、それが可能かどうか、即時に判断できるのです。
とにかく作業中に考える時間で手が止まってしまうことが本当に大きい時間(=コスト)のロスなんです。だから、台帳や版、また在庫が決まった場所になくて探す時間がとても許せないのです(笑)私も見積もりをたくさんこなしますが、計算の根拠はデータベースに入れたり、手書きのメモはスキャンしてPCやクラウドに保存しています。だから定形の見積案件だと、ものの数分で終わります。
このような業務フローをシステム化することも有りですが、カスタマイズすれば数百万円など当たり前で、せっかく作っても使ってもらえなければ意味がありません。ITのシステム化も重要ですが、もっと簡単に、この作業は台帳と一緒にこのフォルダに入れて、〇〇さんから△△君へ、毎日お昼休み後に渡す、などルールを決めてあげれば良いのです。私も標準化を始めた際、最初はエクセルからスタートしました。本当にIT化が必要な部分をIT化しましたが、基本的な考えは、ITの技術ではなく、業務がどうのように流れているか、ということです。
製造業といっても、一昔前、量産時代のコスト計算は今やあまり意味をなさないのではと思っています。目に見えないコストをどう減らしていけるか、これが本当の意味でのコスト削減かと考えています。小規模な工場は、そのコストが製造原価なのか、販売管理なのか、という分け方ではなく、受注から出荷までを1つのフローして、スーッと流れるフローが理想ですね。