作業を早くすれば良いわけではない
昨日の出来事。ある仕事、私の見積もりよりも大分時間がかかることが判明しました。「あー!失敗した!」と嘆いていたところ、うちの社員が一言、「この作業、機械が勝手にやってくれるので、自分は他の作業が出来ます。時間かかっても問題ありません。こっちの方が良いです」と。そっか!そういうことかと。部分的な最適化と全体の最適化は違うんだ!とあらためて思いました。
機械はどんどん進歩します。一つの作業の時間は設備をよくすれば短縮できます。でも、一つの作業を時間短縮できたからと言って、製造部全体の作業が短縮できるとは言い切れません。
機械の作業時間が短くなれば、作業が終わるのも早いので、常に人が付いていないといけません。逆に、機械の作業時間が長くても、勝手に機械にやってもらえれば、その間、他の作業が進められるんです。一つの作業時間が短縮できても、次の工程を始めるまでの待ち時間があれば、そのアドバンテージは無くなってしまうのです。
大分昔の話ですが、あるプレス職人さん、段取りも作業もとても速かった。本当に早い。あっという間に抜き終わる。でも、その仕事の中には可変の製品もあって、番号順に並び替える必要があるんです。例えば1000個の仕事があると、1000個を一つ一つチェックして並び替える。バラバラに抜かれて検品に回るので、並び替えの手間が膨大・・・。結局、検品時間が長引いて、プレス時間の短縮というアドバンテージが無くなってしまいました。その職人さんの最適化が、全体の最適化に繋がらない象徴的な事例でした。
その改善策としてやっていることは、番号のグループごとにブロックを作って探す手間を極力少なくする。そして、検品に渡すときに、どのような意図でブロックを作ったかを伝えること。実は、多品種少量で一番時間がかかるのは検品なのです。なので、最後の検品の時間短縮も考えて、印刷やプレスの工程よりも前の段階、つまり一番最初の工程=版データの作り方を考えるのも大事な作業となります。常に次の工程のことを考える気遣いこそ、製造全体の効率化に繋がるのです。本当に大事です。
機械の作業時間と、人間の作業時間が、良いバランスで進んでいかないと、全体の最適化にはならないんですね。特に多品種少量の場合は。量産であれば、機械の性能を良くして一つの工程を短縮できれば効率化に直結しますが、多品種少量は違います。何度も言いますが、受注から出荷までの一本の流れとしての最適化です。
だから、仕事の滞留って本当に注視しなくてはならないんです。あっという間に作業が終わると気持ち良いので忘れがちですが。早く終わっても、そこに残っていれば意味ないのです!これは笑いごとではないのです。
答えは現場にあるとよく言いますが、昨日はそれを改めて感じました。今後の設備投資を考える際に、とても重要な要素です。良い勉強になりました!